チェストプレス vs ベンチプレス ~大胸筋の筋活動が高いのはどっち?~

目次

この記事の結論(先に答え)

  • 大胸筋の筋活動は、ベンチプレスとチェストプレスで“ほぼ同等”になりやすい(少なくとも一般的なグリップ条件では)。
  • ただし例外として、チェストプレスのニュートラルグリップは「大胸筋上部(鎖骨部)」の活動が有意に高い
  • 逆に、ベンチプレスを極端に狭く(肩幅の50%)すると、大胸筋中部・下部の活動が落ち、上腕三頭筋が上がりやすい
  • そして最大の結論:「どっちが上か」ではなく「両方使う」が最も合理的。種目を“適度に”増やすことは、筋肥大や筋力向上にプラスになり得る、という系統的レビューの整理とも一致します。

まず前提:筋電図(EMG)は「筋肥大の確定」ではない

この記事は「筋活動(EMG)」を根拠にしますが、EMGはあくまで**“その動作中にどの筋がどれくらい活動しているか”の指標**です。
筋肥大は、EMGだけで決まるわけではなく、負荷・総ボリューム・可動域・努力度・継続などで決まります。

なので、今日の結論はこうです。

  • EMGで「向き・不向き」は整理できる
  • でも、最終的な勝ち筋は “組み合わせて、総量を積む” にある

研究の中身:チェストプレスとベンチプレスの筋活動比較(2023)

2023年の研究では、筋トレ経験のある成人20名が、1RMの60%で8回行い、以下を比較しました。

比較した条件(ざっくり)

  • フラットベンチプレス:
    • グリップ幅 150%(肩幅基準)
    • グリップ幅 50%(かなり狭い)
  • 座位チェストプレス:
    • ニュートラルグリップ(約150%)
    • プロネート(順手)グリップ(約200%)

測った筋肉は、**大胸筋(上部・中部・下部)/三角筋前部/上腕三頭筋(長頭)**です。


結果:どっちが大胸筋に効く?

① 大胸筋上部(鎖骨部)

  • チェストプレス(ニュートラルグリップ)が、ベンチ(150%幅)より有意に高い

実務解釈
「上部を狙いたい」「肩が前に出やすくてベンチで上部に入りにくい」人は、
チェストプレスのニュートラルが刺さりやすい。


② 大胸筋中部・下部(胸肋部・肋骨部)

  • ベンチを極端にナロー(50%)にすると、中部・下部が有意に低下

実務解釈
「ナローベンチ=胸にも効く」は状況次第。
少なくともこの研究条件では、胸の中部・下部が落ち、腕(上腕三頭筋)寄りになりやすい。


③ 三角筋前部

  • どの条件でも差がほぼ出ない

実務解釈
「肩に入りすぎるから種目を変えれば解決!」は過信しない方がいい。
フォーム・可動域・肩甲骨のセットの方が影響しやすいケースも多い。


④ 上腕三頭筋

  • ナロー(50%)のベンチで上がりやすい

実務解釈
ナローベンチは、胸狙いというより “押し込みの腕(トライセプス)狙い” と割り切ると設計がブレません。


結論:大胸筋目的なら「ベンチとチェストプレスは同格」になりやすい

研究のまとめとしては、

  • ふつうのベンチ(150%幅)
  • チェストプレス(ニュートラル/順手)

このあたりは大胸筋と三角筋前部の活動が概ね近い
つまり「どっちが上か」で争うより、どう使い分けるかが大事になります。


じゃあ、どう組み合わせるのが最強か?

ここからが、実務で一番重要です。

ポイント1:チェストプレスは「補助種目として優秀」

  • 動作軌道が安定しやすい
  • フォームの再現性が高い
  • 疲れてもフォームが崩れにくい(=狙った部位に“同じ刺激”を入れやすい)

この特性は、筋肥大に必要な「安定したボリューム確保」に強いです。


ポイント2:ベンチプレスは「高負荷の王様」になりやすい

一方でベンチは、全身の連動(ブリッジ・脚・背中の固定)も含めて、
高重量を扱いやすい種目です。

  • 強くなる(重量が伸びる)
  • 伸びがモチベになる
  • 胸・肩・腕をまとめて鍛えられる

ポイント3:「種目を適度に増やす」は、筋肥大にもプラスになり得る

同一筋群に対して種目を変えること(適度なバリエーション)が、
部位ごとの肥大(リージョナル)や動的筋力の最大化に役立つ可能性が系統的レビューで整理されています。

ただし注意点も同じレビューで語られていて、
闇雲にランダムで増やすと逆効果になり得る。

だから結論は、こうです。

  • ベンチで「高負荷の張力」
  • チェストプレスで「安定したボリューム」
    この2枚看板が、現実的に強い。

実際のメニュー例

目的:胸をデカくする(筋肥大優先)

  • ベンチプレス:3〜5セット(中〜高重量、6〜10回中心)
  • チェストプレス(ニュートラル推奨):2〜4セット(8〜15回)
  • 仕上げ(好み):フライ系 or ケーブル(1〜3セット、12〜20回)

目的:肩が怖い/フォームが崩れやすい

  • チェストプレス(ニュートラル):メインで3〜5セット
  • ベンチは軽めでフォーム練習(2〜3セット)
  • 痛みが出るなら、可動域・角度・グリップを調整

よくある質問(誤解を潰す)

Q:ナローベンチは胸に効かないの?

A:効く人もいます。
ただし少なくとも、この研究条件では胸中部・下部の活動が落ち、三頭が上がるので、
「胸目的」でナローを多用するのは設計がブレやすいです。

Q:チェストプレスだけで胸は大きくなる?

A:なります。
ただし、ベンチで高負荷を伸ばせる人は、ベンチを捨てる理由が薄い
“どっちか”より、“両方で役割分担”が合理的です。


まとめ

チェストプレスとベンチプレスは、大胸筋の筋活動が大きくは変わらない条件が多く、「どちらが上か」より「どう使い分けるか」が重要です。2023年の筋電図研究では、チェストプレスのニュートラルグリップで大胸筋上部の活動が有意に高く、ベンチプレスを極端に狭くすると胸中部・下部が落ちて三頭が上がる傾向が示されました。
また、種目のバリエーションは“適度に・体系的に”入れることで筋肥大や筋力向上にプラスになり得る一方、ランダムで過剰な変化は逆効果になり得るため、ベンチ(高負荷)+チェストプレス(安定ボリューム)の二刀流が現実的に強い戦略になります。


参考文献

  • Muyor JM, et al. (2023). Comparison of Muscle Activity between the Horizontal Bench Press and the Seated Chest Press Exercises Using Several Grips.
  • Kassiano W, et al. (2022). Does Varying Resistance Exercises Promote Superior Muscle Hypertrophy and Strength Gains? A Systematic Review.
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