この記事の結論
- 筋トレの継続を左右するのは「根性」ではなく、その場の感情(快・不快、やる気)。
- 16週間のバーベル中心プログラム研究では、トレーニングによってポジティブ感情が高まり、自己効力感や内発的動機づけ(やりたい気持ち)と結びついて**継続(アドヒアランス)**に関係することが示されています。
- さらに、同じメニューでも「自分で強度・回数を決める(自己決定)」だけで、楽しさ・覚醒度が上がることが報告されています。
- つまり、筋トレの成果を上げたいなら「種目」だけでなく、楽しさが上がる条件を先に作るのが最短ルート。
なぜ「楽しい筋トレ」は効果が出やすいのか
ここで言う“効果”は、筋肥大や筋力だけの話ではありません。多くの人にとって最重要なのは、
- 頻度が上がる(サボらない)
- 1回あたりの質が上がる(集中・出力が上がる)
- ボリュームが積み上がる(結局ここが勝負)
です。
そして、楽しさはこの3つをまとめて押し上げます。理由は単純で、つらいことは続かないから。
ただしこれは精神論ではなく、研究では「感情反応(affective response)」として測定され、継続や自己効力感と関連づけて分析されています。
研究で見えるポイント①:続けるほど“ポジティブ感情”が伸びやすい
バーベル中心の16週間プログラムを追った研究では、トレーニング後にポジティブな感情反応が有意に改善し、自己効力感や内発的動機づけが高い人ほど、より良い感情反応や継続と結びつくことが示されています。
ここから言える実務ポイントは2つだけです。
- 最初の数週間で「楽しい」を作れれば、継続しやすい状態に入る
- そのためには、最初から完璧なメニューより “楽しい条件”の方が重要
研究で見えるポイント②:同じメニューでも「自己決定」だけで楽しさが上がる
Rowan University 関連の研究では、まったく同じメニューでも
- 自分で強度・回数・休憩などを決める(自己決定)
- トレーナーに指定される(指示決定)
を比べると、自己決定の方が 楽しさ(快の評価)や覚醒度が高いことが示されています。
ここが超重要で、あなたのメニューが間違っていないとしても、
**「やらされ感」**が強いだけで、楽しさも継続も落ちます。
研究で見えるポイント③:「回数が多すぎる」は不快感を上げやすい
低負荷・高回数(25–30RM)と、中等度負荷(8–12RM)を比べた研究では、低負荷・高回数のほうが不快感(discomfort)などが高いことが報告されています。
つまり、楽しさを作る上での基本はこうなります。
- 「効かせるために高回数」はアリ
- でも、高回数がメインになると“不快感の天井”が上がって、楽しさが削れやすい
- 結果、頻度・ボリュームが落ちる(=長期で損)
研究で見えるポイント④:音楽は“その場の出力”を押し上げる
Samford University の研究では、好みの音楽(preferred music)を聴くことで、ベンチプレスの反復回数が増え、速度・パワー系指標も改善したことが示されています。
さらに、2025年のシステマティックレビューでは、リラックス音楽・刺激的音楽・好みの音楽はいずれも、主観的なメンタル疲労を軽くし、認知/行動パフォーマンス低下を打ち消し得る、と整理されています。
要するに、音楽は「気分」だけでなく、
- その日の出力
- メンタル疲労の回復
にも寄与し得る“環境要因”です。
今日からできる:楽しさ爆上げの筋トレ設計(実践テンプレ)
ここからが本題。理屈は分かったとして、何を変えればいいかを“実装”します。
1)自己決定ポイントを「最低2つ」入れる
全部自由にすると迷うので、2つだけ自由にします。
おすすめの自己決定ポイント(上から優先)
- 種目を2択から選ぶ(例:ベンチ or インクライン)
- レップ範囲を選ぶ(例:6–10回 or 8–12回)
- 追い込み方を選ぶ(例:最後の1セットだけRIR1、他はRIR2–3)
- 休憩を選ぶ(例:2分固定 or 体感でOK)
「同じメニューでも自己決定で楽しさが上がる」データの核はここです。
2)基本ゾーンは「8–12回」中心に寄せる
不快感の上がりやすい高回数をメインにしすぎない。
週のどこかで高回数を入れるのはOKですが、まずは
- メイン:8–12回(または6–10回)
- 仕上げ:12–15回(余裕がある時だけ)
- 25回以上:毎回やらない(“たまに”にする)
にすると、楽しさが安定しやすいです。
3)「強度の達成感」を作る(=成長が見える設計)
楽しさは“気分”だけでなく、「強くなった感覚」で増えます。
だから指標はこれだけでOK。
- 先週より +1回
- 先週より +1.25kg
- 先週より 同じ重量で余裕(RIRが増えた)
この“成長の見える化”が自己効力感を上げ、継続へ繋がります。
4)音楽は「戦闘用」と「回復用」で分ける
- トレ中:好きな曲(出力・反復回数に寄与し得る)
- トレ後:落ち着く曲(メンタル疲労を軽くする整理)
「今日はやる気がない」を潰すのに、音楽はかなり強いです。
最後に:筋トレが続かない人ほど、才能じゃなく“設計”の問題
筋トレは、苦しさを耐える競技じゃない。
楽しさが生まれる条件を整えれば、自然に頻度が上がり、質が上がり、ボリュームが積み上がる。
それが一番強い。
今日やることはシンプルです。
- 自己決定ポイントを2つ入れる
- 8–12回を中心にする
- 好きな音楽で出力を上げる
これだけで、トレーニングは別物になります。
参考文献
- Martinez Kercher VM, et al. Affective Responses to Barbell-Based Resistance Training in a 16-Week Barbell-Based Strength Training Program for Recreationally Active Adults. Sports. 2025;13(3):88.
- Barton NV, et al. Affective responses to identical resistance exercises that are prescribed and self-selected. Psychology of Sport and Exercise. 2025.
- Schwartz H, et al. Exploring the acute affective responses to resistance training. 2021. PMID: 34407124.
- Ribeiro AS, et al. Acute Effects of Different Training Loads on Affective Responses in Resistance-trained Men. 2019. PMID: 31499564.
- Ballmann CG, et al. Effects of Preferred vs. Nonpreferred Music on Resistance Exercise Performance. 2021. PMID: 30531416.
- Ding C, et al. Does music counteract mental fatigue? A systematic review. 2025.
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