忘年会・新年会・歓送迎会……。
これからの時期、「飲み会ゼロで過ごす」は現実的じゃないですよね。
一方で、トレーニーの頭をよぎるのが
- 「アルコールって筋肉を分解するんでしょ?」
- 「せっかくの筋トレが無駄になるのは嫌だ」
という不安だと思います。
結論から言うと——
飲み方を変えれば、アルコールによる筋分解のダメージは限りなくゼロに近づけられます。
この記事では、論文データをもとに
- アルコールがどれくらい筋タンパク合成を下げるのか
- それをほぼ打ち消す「7つの超簡単ルール」
- さらに、疲労やメンタルケアにアルコールの代わりに使える「コーヒー」戦略
まで、まとめて解説します。
先に結論:7つのルールだけ覚えておけばOK
アルコールの筋分解リスクを限りなくゼロに近づける7ルール
- 量は「体重1kgあたり0.5gのアルコール」を目安に抑える
- 70kgなら「純アルコール約35g」=ビール中瓶1.5本 / ワイン約300mL くらい
- 筋トレ後8時間は飲まない(飲む日は筋トレを休む)
- おつまみは枝豆を必ずセットにする(メチオニンで肝臓を守る)
- 飲み会の前に「ホエイ25g+マルトデキストリン25g」を入れておく
- アルコール1杯ごとに水200mL(お酒→水→お酒…と交互)
- 選ぶなら「1杯目ノンアルビール+メインは赤ワイン」、甘いチューハイ・カクテルはNG
- 飲んだ夜〜翌日は「睡眠と休息もトレーニング」と考えてしっかり休む
さらにプラスαとして、
- アルコールはテストステロンを低下させ
- 食欲と総摂取カロリーを上げることも分かっています。
→ 「筋肉を増やしたい・絞りたいなら“付き合い以外の飲酒”は極力減らす」のが得策です。
そして、
疲れやストレス解消には、アルコールよりコーヒーの方が科学的には優秀
というデータも出ています。
ここからは、1つずつ論文を交えながら、もう少し深く見ていきます。
1. アルコールはどれくらい筋タンパク合成を下げるのか?
クイーンズランド工科大学(2014年)の研究
- トレーニー8名を対象
- 高強度トレーニングを実施したあと、
- アルコールなし
- アルコールのみ
- アルコール+プロテイン
などに分けて、筋タンパク合成率(MPS)とシグナル伝達(mTORなど)を測定
結果
- トレ後8時間以内にアルコールを摂取すると
- 血中アミノ酸濃度が低下
- mTORシグナルが抑制
- 筋タンパク合成率は25〜37%低下
- そのときのアルコール量は
体重1kgあたり1.5gのアルコール
例)体重80kgなら
- アルコール 1.5 × 80 = 120g
→ ビール約3.6L、ワイン約1L、ウイスキー約300mL 相当
つまり、
「浴びるように飲む」と、その日のトレーニング効果の3割くらいは平気で消し飛ぶ
ということです。
一方で、体重1kgあたり0.5gのアルコール程度なら、MPSへの悪影響は小さいとされています。
- 70kgの人ならアルコール35g
→ ワイン約300mL、ビールなら中瓶1本半程度
これが、この記事の**“安全圏の目安”**です。
2. ルール①:量は「体重×0.5g」以内に抑える
- 体重60kg → アルコール30g
- 体重70kg → アルコール35g
- 体重80kg → アルコール40g
でざっくりと計算しておけばOKです。
主な酒の「純アルコール量」の目安
- ビール 500mL …… 約20g
- ワイン 150mL …… 約15g
- ウイスキー ショット30mL …… 約10g
70kgの人なら
- ビール:中瓶1.5本くらい
- ワイン:グラス2杯くらい
- ウイスキー:ショット3杯くらい
これくらいが「筋肉に大ダメージを与えにくい上限ライン」と考えておくと分かりやすいです。
3. ルール②:筋トレ後8時間は飲まない(飲む日は筋トレを休む)
トレーニング後は、本来なら
- 筋タンパク合成↑
- 筋肉の修復・超回復が進行中
の“ご褒美タイム”です。
このタイミングでアルコールを入れると、
- アミノ酸の取り込み↓
- mTORシグナル↓
- MPS↓(−25〜−37%)
となり、せっかくのトレーニングがかなり無駄になる可能性があります。
基本ルール
- 飲み会がある日は筋トレをしない
- どうしてもトレ後に飲み会が外せないときは、
少なくともトレ後8時間はアルコールを空ける
ただし、年末年始のように「連日飲み会」がある時期は、
このルールだけだとトレーニング頻度が極端に下がってしまうので、
次の3〜7のルールで“被害を最小化”していきます。
4. ルール③:おつまみは必ず「枝豆」を置いておく
枝豆には、メチオニンというアミノ酸が豊富に含まれています。
- メチオニン:
- 肝臓の保護
- 解毒作用
- アルコール代謝のサポート
に関わる重要なアミノ酸です。
「ビール+唐揚げ」ではなく
「ビール+枝豆」をデフォルトにする
これだけで、肝臓の負担と筋分解のリスクをかなり抑えられると考えてOKです。
5. ルール④:飲み会前に「ホエイ25g+マルトデキストリン25g」
さきほどの2014年の研究では、アルコール摂取の前に
- ホエイプロテイン25g
- ホエイ25g+マルトデキストリン25g
などを摂取した条件も検証しています。
結果
- ホエイ25g摂取:筋タンパク分解が約24%減少
- ホエイ25g+マルトデキストリン25g:約37%減少
つまり、
飲み会前に「たんぱく質+糖質」を入れておくだけで、
その後に飲むアルコールの“筋分解ダメージ”をかなり打ち消せる
ということです。
実践
- 出かける30〜60分前に
- ホエイプロテイン:25g
- マルトデキストリン:25g
を水でサッとシェイクして飲むだけ
粉だけ容器に入れて持ち歩き、
職場や駅のトイレ・更衣室などで水を入れて飲めばOKです。
ウコンや肝機能系サプリより、「ホエイ+マルト」のほうが筋肉的にはよほど有効です。
6. ルール⑤:アルコール1杯ごとに水200mL
アルコールには強い利尿作用があり、
- 脱水
- 血液の粘度↑
- 回復力↓
- 二日酔い・頭痛
などの原因になります。
シンプルな対策
- ビール中ジョッキ1杯ごとに、水200mL
- 「お酒→水→お酒→水…」と交互に飲むイメージ
これをやるだけで、
- 脱水の予防
- 悪酔い・二日酔いの軽減
- 睡眠の質ダウンの緩和
などにかなり効きます。
「せっかくお金払って飲んでるのに、水で薄めるなんて…」
と感じるかもしれませんが、翌日のコンディションと筋肉のために“騙されたと思って”やってみてください。
7. ルール⑥:選ぶなら「赤ワイン」と「ノンアルビール」
⑥-1 赤ワイン:レスベラトロール&ポリフェノール
2020年・シラーズ医科大学のメタ分析では、
- レスベラトロール補給により
- 体重・BMI・体脂肪・ウエスト周囲径が減少
- 筋量の維持・増加にプラス
といった効果が報告されています(効果量は0.2〜0.4と中等度)。
また、2019年・ウィーン医科大学の研究では、
- 赤ワインに含まれるポリフェノールにより
- 抗酸化作用
- 血管保護
- 炎症の軽減
- 高血圧・血糖の改善
などが示されています。
→ 酸化ストレスや慢性炎症は筋分解を促進し、MPSを邪魔する要因なので、
赤ワインは「アルコールの中では筋肉にまだ優しい選択」と言えます。
⑥-2 ノンアルビール:炎症・風邪リスクを下げる
2011年・ミュンヘン工科大学の研究では、
- 男性マラソンランナー277名
- レース前3週間〜レース後2週間
- ノンアルビールを1〜1.5L/日飲む群
- プラセボ群
- 炎症マーカーや風邪の発症率を比較
結果
- ノンアル群はプラセボ群に比べて
- 炎症マーカーが大幅に低下
- 風邪のリスクが約3.25倍低下
2022年のレビューでも、ノンアルビール中のポリフェノールが
- 酸化ストレス低下
- 免疫機能の向上
- 血管内皮機能の改善
- LDLコレステロール低下
に役立つことが示されています。
一杯目をノンアルビールにするだけで、
「乾杯の雰囲気を壊さずに、炎症・免疫・血管を守る」ことができます。
⑥-3 NGなのは「甘いチューハイ・カクテル」
- 砂糖・果糖ブドウ糖液糖・香料・着色料
- アルコール+糖+各種添加物
が合わさった**“筋肉的ワーストドリンク”**です。
- 血糖スパイク
- 中性脂肪↑
- 体脂肪蓄積↑
- 酸化ストレス↑
と、筋肥大・ダイエットの両方に最悪なので、
可能な限り避けるのがベストです。
8. ルール⑦:飲み会後は「睡眠の質」が命
アルコールを飲むと、
- 入眠はしやすくなる
- しかし深い睡眠(ノンレム睡眠)が削られる
- 途中覚醒が増え、回復効率が大きく低下
という状態になりがちです。
- 若い頃は「爆睡した感じ」がしても
- 30代以降は、1晩の睡眠質低下が数日にわたって疲労感として残る
ので要注意です。
できる対策
- 飲み会中〜就寝前にしっかり水分補給
- 帰宅後すぐシャワーで体温リセット
- 寝室は暗く・涼しく・静かに
- 翌日は無理にトレーニングせず、軽い有酸素やストレッチ程度
「飲んだ翌日は“休息もトレーニングのうち”」
くらいに割り切った方が、長期的には筋肉が育ちます。
9. プラスα:テストステロン・食欲への悪影響も知っておく
テストステロンが18〜40%下がる
1977年の古典的研究では、
- ウイスキー4〜8杯の摂取により
- テストステロンが18〜40%低下
というデータが報告されています。
「筋トレ直後に晩酌」は、
MPSを下げる+テストステロンを下げる
という、筋肉にとっては最悪のコンボです。
食欲と総摂取カロリーも増える
2019年・ケンブリッジ大学のシステマティックレビューでは、
- アルコール摂取は食欲を増進し、摂取カロリーを増やす
という結果が示されています。 - 「飲んだら締めのラーメン・うどん・スイーツ」
- 「ついポテト・唐揚げを追加注文」
といった行動になりやすいのは、**脳とホルモンの反応として“正常”**です。
→ 筋肉を増やしたい・絞りたい人ほど、
“付き合い以外の飲酒”を減らした方が有利になります。
10. アルコールの代わりに「コーヒーで疲労ケア」
「仕事でクタクタ」「メンタル的にも限界」
そんなとき、「今日は飲まないとやってられない」と感じることもあると思います。
ただ、身体の疲労回復、メンタルケアの両方で見ると、コーヒーの方がアルコールより圧倒的に優秀です。
筋肉痛を減らす
2017年・アーカンソー大学の研究では、
- 体重1kgあたり3mgのカフェイン(コーヒー約2杯分)で
- 筋肉痛(DOMS)が約10%軽減
という結果が出ています。
うつ病リスクも下げる
2016年・イタリアのメタ分析では、
- 8146人を対象に
- コーヒー摂取量が多いほど、うつ病リスクが約24%低下
ハーバード大学の大規模研究(約30万人)でも、
- コーヒーを1日約400mL飲む人は
- うつ病リスクが32%低下
という結果が報告されています。
「疲れを取りたい」「ストレスを解消したい」と感じたとき、
アルコールではなくコーヒー+軽い散歩・ストレッチに切り替えるだけで、
筋肉もメンタルも両方守れる可能性が高くなります。
まとめ:アルコールと上手に付き合いながら筋肉を守る
- アルコールは大量摂取・トレ後すぐの摂取で、MPSを25〜37%も低下させる
- 一方で、
- 量を体重×0.5gのアルコール以内に抑え
- 飲む日とトレ日を分け
- 枝豆・プロテイン+マルト・水・赤ワイン・ノンアルビール・睡眠
を意識すれば、筋分解リスクはかなり小さくできる
7つのルール(おさらい)
- 量は「体重1kgあたり0.5gのアルコール」に抑える
- 筋トレ後8時間は飲まない(飲む日はトレ休みにするのが理想)
- おつまみは枝豆を優先して肝臓を守る
- 飲み会前に「ホエイ25g+マルト25g」を入れておく
- アルコール1杯ごとに水200mLを挟む
- 選ぶなら「1杯目ノンアルビール+赤ワイン」、甘いチューハイ・カクテルは避ける
- 飲んだ夜〜翌日は、睡眠と休息を最優先する
そして、
日常的なストレス解消には、アルコールではなくコーヒーを選ぶことで、
筋肉・メンタル・健康を同時に守ることができます。
お酒も筋トレも上手に楽しみながら、
「筋肉を減らさず人生の質を上げる」飲み方にシフトしていきましょう。
References(English)
- Barnes MJ et al. Alcohol intake following resistance exercise in men: effects on muscle protein synthesis and anabolic signaling. (Queensland University of Technology, 2014).
- Scherr J et al. Nonalcoholic beer reduces inflammation and incidence of respiratory tract infections in marathon runners. Med Sci Sports Exerc. 2012.
https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2012/01000/Nonalcoholic_Beer_Reduces_Inflammation_and.4.aspx - Faria A et al. Polyphenols and non-alcoholic beer: health effects and mechanisms. Nutrients. 2023;15(1):173.
https://www.mdpi.com/2072-6643/15/1/173 - Liu Y et al. Resveratrol supplementation and body composition: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2014.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0088384 - Effect of caffeine on muscle pain and exercise performance. PubMed ID: 30421960.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30421960/ - Coffee consumption and depression risk. PubMed ID: 30934670.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30934670/ - Alcohol consumption and testosterone levels. PubMed ID: 894528.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/894528/ - Rose AK et al. Effect of alcohol consumption on food energy intake: a systematic review and meta-analysis. Br J Nutr.
https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/effect-of-alcohol-consumption-on-food-energy-intake-a-systematic-review-and-metaanalysis/2F9AB5C64A86329EB9E817ADAEC3D88C - Additional practical discussion based on:
https://www.youtube.com/watch?v=bBwr4g5-cYg&list=PLgJGiQfeeO6TKb2H5HAnGuprcXx5R__ZL&index=14
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