筋トレの“常識”を論文で覆す:筋繊維・クレアルカリン・毎日トレの落とし穴3選

目次

この記事で分かること

  • 「遅筋→速筋に変わる」はどこまで本当か
  • クレアルカリン(Kre-Alkalyn)は“上位互換”なのか
  • 「毎日筋トレ」=最短ルート、が危険になり得る理由
  • 今日からの現実的な結論(どうやって鍛えるべきか)

はじめに:信じて努力してきた人ほど、損をする“もっともらしい話”

「筋トレを続ければ遅筋が速筋になる」
「良いサプリを飲めば筋肥大が加速する」
「毎日やれば誰よりも早く強くなれる」

この3つ、SNSやジムの現場で“正しそう”に語られがちです。あなたの原稿が指摘している通り、どれも直感的には魅力的なんですが、研究全体を見渡すと**「言い切れるほど単純ではない」**のが現実です。【筋トレ科学】99%が勘違いしている「筋肉の常識」3選 ~常識…

ここからは、論文ベースで「どこが誤解されやすいのか」「じゃあ何を信じればいいのか」を、できるだけ実用に落として解説します。


1. 常識①「遅筋は筋トレで速筋になる」←ここが一番ズレやすい

そもそも筋繊維タイプって何?

ざっくり言うと、ヒト骨格筋は主に

  • Type I(遅筋):疲れにくい・持久向き
  • Type II(速筋):大きい力・パワー向き
    に分かれ、Type IIはさらに IIa / IIx などのサブタイプが話題になります。筋トレ界隈で重要なのは、一般に「高強度局面で動員されやすい」「サイズや出力に関係しやすい」とされるType II側です。LWW Journals

研究でわりと一貫していること:「変わるなら、まずIIx↔IIa」

あなたの原稿が強調しているポイント(Type I→Type IIへ“変身”するというイメージが誤解を生む)は、研究全体の整理としてかなり重要です。実際、トレーニング介入で比較的一貫して観察されるのは、**Type II内(例:IIxが減ってIIaが増える)**のシフトで、強化・パワー系トレーニングでその傾向が報告されています。LWW Journals+1

一方で、Type Iが大量にType IIへ置き換わるような“漫画的変化”は、少なくとも一般的な筋トレ指導で期待するのは現実的ではありません(実際の筋はハイブリッド繊維や測定法の影響もあり、単純な変身ストーリーには乗りません)。筋繊維タイプの分布や可塑性を考える上では、ヒト筋のIIxの扱い(出現率が低い/測定で揺れる等)も含めて注意が必要です。Physiology Journals

「遅筋→速筋に変えたい」より、狙うべきは別の変数

ブログ読者にとって重要なのはここです。

筋肥大・筋力を左右するのは、筋繊維タイプ“そのものの比率”というより

  • 十分な張力(高い努力度)
  • 漸進的オーバーロード
  • 総トレーニング量(やり過ぎない範囲で)
  • 回復(睡眠・栄養・疲労管理)
    みたいな「変えられるレバー」です。

筋繊維タイプの話は面白い一方で、読者がやりがちなのが「タイプを変えること」自体を目的化して迷子になること。狙うべきは、結果として筋が太く強くなる“入力設計”です。

遺伝の話:悲観よりも「戦略の個別化」

あなたの原稿では「遺伝の影響」をかなり強く打ち出していますが、ここは言い方次第で“諦め”にも“最適化”にもなる部分です。

たとえば、除脂肪量(Lean body mass)に関連する遺伝学的研究は、ゲノム規模で「関連する座位」が報告されています。PubMed+1
また、双生児研究や総説では、筋力や除脂肪量がかなり遺伝の影響を受けることが繰り返し示されています。PubMed+2Wiley Online Library+2

ただし重要なのは、これは「努力が無意味」ではなく、同じメニューでも伸び方に個人差が出るという話です。
だからこそ、ブログとしての結論はこうです:

  • “誰かの最短ルート”を真似するより
  • 自分の回復力・痛み・生活に合わせて、継続できる形に寄せる

これが最終的に勝ちます。


2. 常識②「クレアルカリンはクレアチンの上位互換」←エビデンスの壁

クレアルカリンとは?

クレアルカリン(Kre-Alkalyn)は「pHを調整した(バッファード)クレアチン」系として宣伝されることが多く、よくある主張は

  • 吸収が良い
  • 少量で効く
  • 胃が荒れにくい
  • むくみにくい
    などです。【筋トレ科学】99%が勘違いしている「筋肉の常識」3選 ~常識…

重要:査読付きで“真正面比較”した研究がある

この論点は、あなたの原稿だと「査読付きが少ない/宣伝資料っぽい」と整理していましたが、実際には査読付きで、Kre-Alkalynとクレアチンモノハイドレートを比較した臨床研究が存在します。

代表例が、**Jagimら(2012)**で、結論としては

Kre-Alkalynが、筋内クレアチン量・体組成・トレーニング適応でモノハイドレートを上回る証拠は示せなかった
という方向です。PMC

さらに、クレアチン関連化合物全体を批判的にまとめたレビューでも、結局のところ**“最も裏取りが厚いのはモノハイドレート”**という整理になります。MDPI

実用結論:迷ったらモノハイドレートでいい

読者にとっての実務はシンプルです。

  • モノハイドレート:エビデンス量が圧倒的に多い、価格も安い、効果も再現性が高いMDPI
  • クレアルカリン:宣伝は強いが、少なくとも“上位互換”を断言できる科学的優位は弱いPMC+1

なのでブログでは、こう書くのが一番読者に優しいです:

「クレアルカリンが悪」とは言わない。でも“上位互換で少量でOK”は、現状の査読論文だけだと強くは言い切れない。コスパと確実性ならモノハイドレート。


3. 常識③「毎日筋トレが最短」←短期的に“強くなる”ことはあっても、代償が出やすい

5日連続の高強度スクワットで何が起きたか(2025年)

あなたの原稿が引用している「5日連続で高強度の脚トレ」の研究は、まさに“毎日追い込む”の現実を見せてくれます。
Bellら(2025)は、トレーニーに高強度バックスクワットのオーバーリーチングを短期間で課し、パフォーマンス・主観指標・ウェルネス等を追跡しています。PMC+1

ポイントはここです:

  • 連日高強度は、短期的にパフォーマンスや回復感が落ちる(当たり前にしんどくなる)PMC
  • その後、計画的に回復(テーパー)を入れると、反発的にパフォーマンスが伸びる可能性があるPMC

つまり、「毎日やれば伸びる」ではなく、より正確には

“意図的に負荷を積むフェーズ”と“回復させるフェーズ”がセットで機能する
という話です。

頻度の研究全体で見ると:「回数」より「週の総量」と「回復」

筋肥大に関しては、頻度そのものよりもボリュームが揃っているかが重要、という結論が強いメタ分析があります。Schoenfeldら(2019)は、ボリュームを等量化した場合、頻度差が筋肥大に大きな意味を持ちにくい、という整理を示しています。PubMed+1

だから、ブログ読者に刺さる結論はこうです:

  • 毎日できるかどうかより
  • 週トータルで続けられる量
  • 痛みと疲労をコントロールできる設計
  • 継続できる生活導線

ここが最優先。


今日からの“現実解”:この3つだけ守れば、かなり勝てる

最後に、読者が行動に変えやすい形でまとめます。

✅ 筋繊維:変身を狙わない

  • 「遅筋→速筋に変える」より
  • 高努力度での反復・漸進性・回復に集中
  • Type II内のシフトは起こり得るが、“魔法”を期待しないLWW Journals+1

✅ サプリ:まずは“根拠の厚い順”

  • クレアチンなら基本はモノハイドレート
  • クレアルカリンは「上位互換」を言い切れるほどの査読証拠が強くないPMC+1

✅ 毎日トレ:やるなら“計画的に”

  • 連日高強度は、疲労と主観・パフォーマンスを普通に壊すPMC
  • 伸ばすなら「負荷を積む→回復させる」の設計
  • 筋肥大は頻度より、週の総量と回復が軸になりやすいPubMed

参考文献(English)

  1. Wilson JM, Loenneke JP, Jo E, et al. The Effects of Endurance, Strength, and Power Training on Muscle Fiber Type Shifting. J Strength Cond Res. 2012;26(6):1724–1729. doi:10.1519/JSC.0b013e318234eb6f LWW Journals+1
  2. Jagim AR, Oliver JM, Sanchez A, et al. Kre-Alkalyn® supplementation does not promote greater changes in muscle creatine content, body composition, or training adaptations in comparison to creatine monohydrate. J Int Soc Sports Nutr. 2012. PMC
  3. Kreider RB, Jäger R, Purpura M. Bioavailability, Efficacy, Safety, and Regulatory Status of Creatine and Related Compounds: A Critical Review. Nutrients. 2022;14(5):1035. doi:10.3390/nu14051035 MDPI
  4. Bell L, et al. Effects of a 5-Day Back Squat Overreaching Protocol on Performance, Perceptual, and Wellness Responses. 2025. (PMC article) PMC+1
  5. Schoenfeld BJ, Grgic J, Krieger J. How many times per week should a muscle be trained to maximize muscle hypertrophy? J Sports Sci. 2019. Taylor & Francis Online+1
  6. Zillikens MC, Demissie S, Hsu YH, et al. Large meta-analysis of genome-wide association studies identifies five loci for lean body mass. Nat Commun. 2017;8(1):80. doi:10.1038/s41467-017-00031-7 PubMed+1
  7. Arden NK, Spector TD. Genetic influences on muscle strength, lean body mass, and bone mineral density: a twin study. J Bone Miner Res. 1997;12:2076–2081. doi:10.1359/jbmr.1997.12.12.2076 PubMed+1
  8. Roth SM. Genetic aspects of skeletal muscle strength and mass with relevance to sarcopenia. BoneKEy Rep. 2012. PMC
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