この記事の結論(先に要点だけ)
- 同じメニューでも「1回でまとめる」より「2回に分ける」方が、総反復数(トレ量)がわずかに増えやすい(+3%)。一方で、1回でまとめる方が“きつい(努力感・不快感)”のに、なぜか“快(セッションの快感)”は高くなり、しかも好まれやすいという逆説が出ています。
- **低負荷・高回数で限界までやる(25–30RMで失敗まで)**は、中負荷(8–12RM)より「努力感」「不快感」が増え、感情は“快”より“不快”に振れやすい(セッション後の快・不快評価がマイナス側へ)。
- つまり「筋肉に効くか」以前に、**続かない設計(長すぎる/だるすぎる/不快すぎる)**が最大の失敗要因。
- 攻略法はシンプルで、“長すぎる1回”をやめて「短く分割」し、低負荷高回数の“苦行”をメインから外す。その上で、週の総セット数(総量)を確保する。
なぜ「情動反応(不快感・満足感)」が重要なのか?
筋トレの継続を壊すのは、知識不足よりも「気持ち」です。
同じ筋トレでも、
- 不快感が強い
- 努力感が重すぎる
- 終わったあとに“嫌な記憶”が残る
この状態が続くと、トレーニングは“習慣”にならず、だいたい途中で消えます。
だから、筋肥大の最適化と同じくらい重要なのが、
「続けられる情動反応」に調整することです。
研究①:「1回で46分」vs「21分×2回」—“長い筋トレ”は何を生む?
**Pedersenら(2022)**は、下半身の同一メニューを
- 1回でまとめる(約46分)
- 同日中に2回へ分割(合計約43分、間隔3.5–5時間)
で比較し、**総反復数(トレ量)**と、**主観(努力感・不快感・快/不快・楽しさ)**を調べました。
主要結果(超重要なポイントだけ)
- 分割(短い×2回)の方が、トレ量が+3%多い
- 1回でまとめる(長い)の方が、努力感(RPE)が約+1ポイント高い
- 不快感(RPD)も、長い方が約+1ポイント高い
- なのに、セッションの快/不快(sPDF)は“長い方が快側”
- 楽しさ(EES)は差なし
- そして最も面白い:23人中22人が「長い1回」を好んだ
ここが本題:「きついのに、なぜ“長い方が好き”になるのか?」
この研究は、筋トレ民の“あるある”を数字で殴ってきます。
- 長い1回は きつい(努力感↑・不快感↑)
- でも、終わったあとの評価は 快が高い
- しかも、多くの人が そっちを選ぶ
これが意味する現実はこうです。
✅ 「達成感=良い設計」とは限らない
“長く頑張った感” は満足を生む。
でも、同じメニューを分割した方が トレ量は増える。
つまり、
満足してるのに、効率は落ちてる
という逆転が起きる可能性がある。
研究②:低負荷・高回数は「不快感」を増やしやすい
**Ribeiroら(2019)**は、トレ歴のある男性が
- 8–12RM(中負荷)で失敗まで
- 25–30RM(低負荷高回数)で失敗まで
を行ったときの、セッション後の主観反応を比較しました。
結果(数値が強い)
- 努力感(sRPE):低負荷高回数 6.4 ±0.7 vs 中負荷 5.5 ±1.0
- 不快感(sRPD):低負荷高回数 8.7 ±1.0 vs 中負荷 6.7 ±1.7
- 快/不快(sPDF):中負荷は快(+1.2)、低負荷高回数は不快(−2.3)
要するに、低負荷高回数で限界まで追い込むのは、主観的に“苦行化”しやすい。
しかも、苦行化すると、継続率は落ちやすい。
追加の裏付け:時短テク(スーパーセット)も“きつさ”は上がりやすい
同じノルウェー系の研究で、伝統的(通常) vs スーパーセット(時短)を比べると、
スーパーセットは時間は短いが、努力感・不快感は上がり、トレ量は下がる傾向が報告されています。
つまり「時短なら正義」でもなく、時短テクは“主観きつさ”を上げる副作用があり得る。
ここまでのまとめ:情動反応から見た“負けパターン”
あなたの筋トレが続かないなら、原因はだいたいこの2つです。
負けパターン①:1回が長すぎる
- きつい(努力感↑)
- 不快感↑
- でも達成感は出るから「間違いに気づきにくい」
負けパターン②:低負荷高回数で“苦行化”
- 努力感↑
- 不快感↑
- 気持ちは不快側へ振れる
解決策:科学的に「筋トレ頻度」を決める3ステップ
ここからは実装です。
“万人に唯一の正解”はありません。だからこそ、評価→調整が最適解になります。
Step1:週の総セット数(まず総量)を決める
最初にやるのは「頻度」ではなく、**週の総セット数(総量)**です。
目安としては(かなり現実寄りに):
- 初心者(〜1年):各筋群 週10セット前後
- 中級以上:各筋群 週15〜20セット前後
※この段階では細かい理論より「継続できる現実ライン」でOK。
Step2:その総量を「何回に分けるか」を決める
ここでPedersen研究が活きます。
- 1回が長くなるほど、努力感・不快感が上がりやすい
- だから、同じ総量でも 短く分割するほど精神的負担が下がりやすい
実務の鉄則
- 1回が60分を超えるなら、分割を検討
- “脚の日が長い”なら、脚を2日に割る(脚A/脚B)
- 週2回で各筋群10セットやるより、週4回で各筋群5セット×2回の方がラクな人は多い
Step3:1週間回して「情動反応」で微調整する
最重要。ここが勝敗を分けます。
調整の基準(5つの質問)
次のうち 2つ以上当てはまるなら、頻度 or 1回のボリュームが過剰の可能性が高いので、いったん下げて様子見。
- ジムに行くのが気乗りしない
- 睡眠の質が落ちた
- 挙上成績が落ちている
- ストレスを強く感じる
- 体の痛みが強い
このチェックは研究でそのまま検証された質問票ではありませんが、「継続を壊す兆候」を早期に拾う実務ツールとしては強力です。
“不快感を減らす”ための具体ルール
ルール①:低負荷高回数を「メイン」にしない
低負荷高回数で限界までやると、努力感・不快感が増え、感情が不快へ振れやすい。
だからメインは、まず 8–12回前後で追える負荷に置くのが安全。
※低負荷高回数が全て悪ではありません。
ただし「続かない人」が最初に切るべきは、たいていここです。
ルール②:1回を短くし、頻度で稼ぐ
同じ内容でも、まとめると努力感・不快感が上がりやすく、分割の方がトレ量は増えやすい。
だから、忙しい人ほど
“短く・頻回” が勝ちやすい。
ルール③:「満足感に騙されない」
長い1回は快が上がって好まれやすい。
でも、成果を決めるのは「気分」ではなく「積み上げ」です。
まとめ
筋トレの継続を左右するのは、筋肥大理論だけではなく「情動反応(不快感・努力感・快/不快)」です。研究では、同じ下半身メニューでも、1回でまとめる長いセッションは努力感・不快感が上がる一方、セッションの快感が高く、好まれやすいという逆説が報告されています。ただし、短く分割した方が総反復数(トレ量)はわずかに増えました。
また、低負荷高回数で限界まで追い込む方法は、努力感と不快感を強め、気分を不快側に振れさせやすいことも示されています。
だからこそ、「長すぎる1回」をやめて短く分割し、苦行化しやすい低負荷高回数をメインから外すことが、継続率と成果を同時に上げる現実的な戦略になります。
参考文献
- Pedersen H, et al. Effects of one long vs. two short resistance training sessions on training volume and affective responses in resistance-trained women. Front Psychol. 2022.
- Ribeiro AS, et al. Acute Effects of Different Training Loads on Affective Responses in Resistance-trained Men. Int J Sports Med. 2019.
- Andersen V, et al. A Comparison of Affective Responses Between Time Efficient and Traditional Resistance Training. Front Psychol. 2022.
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