【筋トレ科学】減量中でも筋分解を最小化させる方法 ~筋サテライト細胞を支配する~

目次

先に結論

  • 強度×ボリューム×継続でサテライト細胞(筋の幹細胞)が増え、ミオニュクリ(筋核)が増設されます。
  • エストフォルド大学を含む研究では、10週の筋トレ→16週デトレでも筋核は維持。再開後の反応土台になります。PubMed
  • 減量期は**短い赤字(カロリー不足)→小休止(ダイエットブレイク)**を挟む設計で、筋分解を限りなくゼロに近づけるのが現実的です。PubMed+1PMC

サテライト細胞って何?

かんたんに言うと**“筋肉の増設スタッフ”。強い刺激や損傷で目覚め、筋の修復と増築を助けます。増えたサテライト細胞は筋核**として筋線維に取り込まれ、**太くなる準備(反応性の土台)**を作ります。レビューでもこの仕組みは人・動物で広く支持されています。PMC


エストフォルド大学の研究(Cumming 2024, J Physiol

目的:ヒトでの“筋肉メモリー”の細胞メカニズム(筋核の永続性転写調節)を検証。PubMed

研究デザイン(合計38週)

  • 参加者:未トレの男女12名
  • 期間①:10週の片腕トレ(肘屈筋)
  • 期間②:16週の完全デトレ(休止)
  • 期間③:10週の再トレ両腕で同じトレ)
  • 測定:筋生検で筋繊維断面積(fCSA)・筋核数・RNA-seq(遺伝子発現)を評価。PubMed

結果(ポイントだけ)

  • 筋核は増えて、休んでも維持
    • 初回10週でタイプI筋に+13%タイプII筋に+33%の筋核増加
    • 16週デトレ後も筋核は維持(タイプIIで**+33%高いまま**)。PubMed
  • サイズ(fCSA)は一旦しぼむが、土台は残る
    • デトレでfCSAは減少。ただし筋核は残る再開時の“配線・人員”は確保PubMed
  • 再トレの反応
    • 再トレ後、以前に鍛えた側のタイプIIでfCSAが大きい(P=0.035)。
    • ただし増加量の差は明確でない“筋核の貯金”が即・爆伸びに直結かは未確定。研究自身も「生理的ベネフィットは今後検証」と結論。PubMed
  • 遺伝子発現
    • 未経験側(コントロール)は1338遺伝子が大きく変化、既経験側は822遺伝子“慣れ”により省エネで反応している可能性。PubMed

この研究から言えること/言えないこと

  • 言える:ヒトでも筋核は増え、16週休んでも維持“やめたら全部ゼロ”ではないPubMed
  • まだ言えない筋核の貯金=再トレの肥大が必ず大幅UPとは断言できない(効果はあるが限定的)。PubMed

どう増やす?(サテライト細胞と筋核の“増設”ルール)

ここは今日から真似しやすい形で。

1) 期間:まずは10〜12週を1ターン

エストフォルド大学の10週設計は実践的。3か月を目安に“増設フェーズ”を作りましょう。PubMed

2) 強度:6〜12RMを中心に

高〜中強度は効率よく肥大します。低負荷でも限界までやれば筋肥大は起こるが(全体効果)、現場の効率を考えると6〜12RMが実用的。総説・メタ解析の結論とも整合します。MDPI
※ただし低負荷×血流制限(BFR)はサテライト細胞や筋核を増やす報告あり。関節配慮が必要な人の選択肢。Physiology JournalsFrontiers

3) ボリューム:週10セット前後/筋群を基準に

ボリューム(週合計セット数)と肥大は段階的に比例。まずは10セット/週、慣れたら10〜20セットで最適化。PubMedFrontiers

4) 頻度:週2回以上で分散

ボリュームが同じなら頻度の差は小さいが、実務上は分散した方がフォームと質を保ちやすいPubMed


減量期でも“筋分解を最小化”する設計(実践テンプレ付き)

結論から:短い赤字→小休止→再び赤字を作ると、代謝の落ち込み除脂肪量の減りを抑えやすい、というエビデンスが増えています。PubMedPMC

テンプレ(まずはここから)

  • フェーズA(2〜4週)−20〜25%のエネルギー赤字(高タンパク)+上の増設ルールを維持
  • フェーズB(1〜2週)維持カロリー〜+10%へ戻す(主に炭水化物を増やす/トレ質を上げる)
  • これを2〜3サイクル繰り返す(合計8〜12週)。
    MATADORICECAP、ボディコンテスト選手のRCTでも連続より“挟む”方が有利な指標が見られました(体重効率、除脂肪量、RMR、主観的回復など)。PubMed+1PMCPLOS

ポイント

  • ブレイク中もたんぱく質約2.0 g/kgはキープ。
  • 強度(重量)は落とさない=神経面・筋力の維持を最優先。
  • 長期の連続赤字は避ける(質も気力も落ち、筋核の“貯金”を活かせない)。レビュー的にも**“断続的”**の利点が示唆。Academic Oxford

1週間サンプル

  • :下半身重め(6–10RM中心/合計8–10セット)
  • :上半身プッシュ(6–12RM/合計10セット)
  • BFRオプションで上半身プル軽め(またはオフ)
  • :下半身ボリューム日(8–12RM/合計10–12セット)
  • :腕・肩(6–12RM/合計10セット)
  • :オフ(または有酸素20–30分)
  • :オフ
    → ボリューム合計は1筋群あたり週10〜20セットに収める。フォームとRIR 0–3で小刻み更新。PubMed

よくある質問(超シンプル)

Q. 低負荷はダメ?
A. 筋肥大自体は可能。ただし時間効率と実務では6–12RMが便利。関節に配慮が必要ならBFRという手も。MDPIFrontiers

Q. どのくらい休んでも“筋核の貯金”は残る?
A. エストフォルド大学の研究では16週(約4か月)休んでも維持を確認。ただし再トレの“爆伸び保証”までは未確定PubMed

Q. 減量が長引くとどうなる?
A. 連続赤字が長期化すると、代謝適応やパフォーマンス低下が進みやすい。2〜4週赤字→1〜2週ブレイクの波を推奨。PubMedPMC


まとめチェックリスト

  • 10〜12週の“増設フェーズ”をまず1ターン
  • 6〜12RM × 週10〜20セット × 週2回以上
  • 低負荷はBFR併用で選択肢
  • 減量は“赤字→ブレイク”の波で(2〜4週→1〜2週)
  • 強度は落とさない(筋力維持を最優先)

References(English, with links)

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次