筋トレ後の筋肉痛や「筋肉の張り」を少しでも早く取りたい。
そんなときに候補に上がるのが「マッサージガン」と「フォームローラー」です。
- 高価だけど“効きそう”なマッサージガン
- 手軽でポピュラーなフォームローラー
実際のところ、科学的にはどちらが優れているのか?
2025年にワルシャワ応用科学大学から、両者を真正面から比較した初の研究が出ました。
この記事では、
- 2025年の「マッサージガンVSフォームローラー」直接比較研究の結果
- フォームローラーのメカニズムとエビデンス
- マッサージガンのメカニズムとエビデンス
- 第3の選択肢「振動フォームローラー」の効果
- 研究を踏まえた“使い分け”と、具体的な使い方の目安
までを、論文ベースで分かりやすく整理していきます。
1. 2025年最新研究:DOMSに対してどっちが強い?
1-1. 研究デザイン
2025年に Szajkowski らが発表した研究では、**フォームローリング(FR)とパーカッシブマッサージ(PM=マッサージガン)**を、DOMS(遅発性筋肉痛)の状況で直接比較しています。
- 対象:健康な男女60名
- 筋肉痛の作り方:
- 下腿三頭筋(ふくらはぎ)に筋肉痛がしっかり出るような運動をさせる
- その後の3日間で以下の3群に分けて介入
- フォームローラー群
- マッサージガン群
- コントロール(安静)群
1-2. 介入プロトコル
- フォームローラー
- ふくらはぎ全体を前後にローリング
- 1回5分、やや痛い強さ(圧痛を感じる程度)
- マッサージガン
- ふくらはぎに1分あたり約3200回の振動で刺激
- 同じく1回5分
この状態で、以下の指標を3日間にわたって測定しました。
- 筋肉の硬さ(stiffness)
- 筋緊張(tone)
- 粘弾性(elasticity)
- 疼痛(NRS:数値評価スケール)
1-3. 結果:フォームローラー優位なのは「硬さ・張り」
結論だけ言うと、筋肉の硬さや張りを早く取る“リカバリー”という観点ではフォームローラーが一歩リードという結果でした。
- 筋肉の硬さ・緊張・弾性
- 3群とも時間とともに改善
- フォームローラー群で最も大きく改善
- 特に「硬さ」に関しては効果量 d ≈ 0.38 と中等度の効果
- 疼痛(痛みの強さ)
- マッサージガン群で改善傾向はあるものの
- 群間の有意差はなし(安静群と統計的には同程度)
つまり、
- 「筋肉がパンパン」「張ってて重い」「硬い」という
バイオメカニカルな状態を早く戻したいならフォームローラーが有利- 「痛みそのもの」を下げる効果は、どちらも「安静と大差なし」
というのが、この研究から導ける結論です。
1-4. ただし、この1本だけで“完全決着”ではない
この研究は「筋肉の機械特性(硬さ・粘弾性)」に強い指標を置いており、
- 関節可動域(ROM)
- 局所血流
- 痛みの閾値(どこまで押したら痛いか)
などの指標は含まれていません。
フォームローラーとマッサージガンはメカニズムが違うので、
「何を指標にするか」で優劣が変わる可能性があります。
そこで次に、それぞれのメカニズムと、他のエビデンスを整理します。
2. フォームローラーのメカニズムとエビデンス
2-1. 筋膜リリースとは何か?
筋肉はざっくり言うと、以下のような層構造になっています。
- 筋線維 1本1本を包む:筋内膜(endomysium)
- それらの束を包む:筋周膜(perimysium)
- 筋全体を包む:筋外膜(epimysium)
一般的に「筋膜リリース」と言われているのは、
主に筋外膜まわりの滑走性を高めるアプローチです。
筋膜は、
- 筋肉同士の摩擦から保護
- 力の伝達を助ける
- 血管・神経・リンパ管を支える
といった役割を持つため、ここが硬くなると
- 「筋肉が突っ張る」「動かしづらい」
- 血流・リンパの流れが悪くなる
といった不調につながります。
2-2. 足底フォームローラーとふくらはぎの筋力・柔軟性
2023年、グラーツ大学(オーストリア)の研究では、足底(足裏)にフォームローラー+ストレッチを7週間行うと、ふくらはぎ(三頭筋)の機能はどう変わるかが検証されています。
- 対象:アスリート38名
- 介入:足底へのフォームローリング+ストレッチ 週2〜3回、7週間
- 評価:
- 足関節背屈のROM
- 下腿三頭筋の最大筋力
- 筋構造(超音波による観察)
結果:
- 足首の可動域(背屈 ROM)が有意に向上
- ふくらはぎの最大筋力もわずかに向上
- 筋構造も一部で有意な変化
つまり、足の裏にフォームローラーを使うだけでも、
- 足首まわりの柔軟性
- ふくらはぎの筋力
が、少しずつ良くなる
という「遠隔効果」が確認されています。
2-3. フォームローラーは“ストレッチと同等”、でもパフォーマンス低下は起こりにくい
フォームローリングとストレッチを比較したメタ分析では、
- 急性のROM向上について
→ フォームローリングはストレッチとほぼ同等に関節可動域を広げる - しかし
→ 60秒以上の長い静的ストレッチは、その直後の筋力・パワーを少し落とす可能性
→ 一方フォームローリングでは、パフォーマンス低下は報告されていない
という結果が出ています。
2-4. フォームローラーの総合的な効果(レビュー&メタ分析)
2019年の Wiewelhove らのメタ分析、2020年の Hendricks らのレビューでは、
49件前後の研究をまとめ、フォームローリングの効果が整理されています。
総合すると、フォームローリングは
- ROM(柔軟性):小〜中程度の改善
- DOMS(筋肉痛):痛みの自覚的軽減
- 筋疲労感:軽減傾向
- スプリント・ジャンプ・筋力:ほとんど悪化させず、場合によっては微増
また、ROMに関しては1部位あたり 90〜120秒程度のフォームローリングが
最も効率的というデータもあります。
3. マッサージガン(パーカッシブマッサージ)のエビデンス
3-1. まだ「若い」分野だが、急速に研究が増加中
マッサージガンに関する研究は、2018年以降に急増しています。
2023年の Ferreira らのシステマティックレビューでは、
マッサージガンに関する13本の研究を集めて整理しています。
主な結論は、
- 単回のマッサージガン使用で
- 筋力・爆発的筋力・柔軟性が短期的に向上する可能性
- 複数回の使用で
- 筋骨格痛の軽減に寄与しうる
ただし、研究の質はまだまちまちで、プロトコルもバラバラ(時間・周波数・圧など)。
3-2. DOMSリカバリーの研究
2025年 Li らのRCTでは、DOMS回復に対するパーカッシブマッサージ vs ストレッチが比較されています。
- 対象:運動習慣のある若年男性30名
- DOMS誘発:スクワット
- 介入:
- 静的ストレッチ群
- 25分間のマッサージガン
- 40分間のマッサージガン
結果:
- 40分間のマッサージガン群で
- ROM、筋力、痛みの回復が他群より良好
- 25分やストレッチよりも、“時間をかけたマッサージガン”が有利という傾向
つまり、
「5分だけサッと当てる」程度だと、DOMSの回復にはほとんど効かない
しっかり時間(20〜40分)を確保すると、回復に寄与する可能性
ということが示唆されています。
3-3. ウォームアップでのマッサージガン
一方で、ウォームアップへの組み込みについては注意が必要です。
- マッサージガン+フォームローラーを動的ウォームアップに足した場合
→ ROMや筋肉痛は改善するが、スプリントなど一部のパフォーマンスは悪化する可能性がある
という報告もあります。
まとめると、
- 可動域・柔軟性・痛み軽減にはプラスに働く可能性
- しかし、パフォーマンス(瞬発系)の面では必ずしもプラスばかりではない
- プロトコル(時間・強度・タイミング)が非常に重要
というのが現状のエビデンスです。
4. 第3の選択肢:振動フォームローラー(VFR)
フォームローラーとマッサージガンの中間のような存在が、
**「振動フォームローラー(Vibration Foam Roller, VFR)」**です。
4-1. ハンドボール選手を対象とした研究
2023年、国立台湾体育大学から、
ダイナミックストレッチ+振動フォームローラーのウォームアップが
下肢筋に与える急性効果が報告されています。
- 対象:女子ハンドボール選手10名
- 3条件比較
- 一般的なウォームアップのみ(ジョギング+ストレッチ)
- ジョギング+ダイナミックストレッチ
- ジョギング+ダイナミックストレッチ+振動フォームローラー
結果:
- 振動フォームローラーを加えた群で
- 膝関節の可動域がより大きく向上
- ハムストリングスの筋持久力も有意に向上
- 一方で、関節位置覚(感覚)には有意差なし
→ 柔軟性+筋持久力アップという点で、振動フォームローラーにメリットが示されました。
4-2. 振動アリ vs なしフォームローラーの比較
2021年 Reiner らは、**振動フォームローラー(VFR)と通常フォームローラー(NVFR)**を比較しています。
- 対象:21名
- 評価:
- 大腿四頭筋の最大随意等尺性トルク(筋力)
- ROM
- 受動抵抗トルク
- 筋の剪断弾性率
結果:
- 筋力:両方とも増加したが、振動フォームローラーの方が増加量が大きい
- ROM:振動フォームローラーのみ有意に改善
- 筋の柔軟性:振動フォームローラーでより改善
つまり、
通常のフォームローラーでも十分効果はある
そこに「振動」を足すと、筋力・柔軟性・筋の柔らかさがさらに上乗せされる
という方向のデータが出ています。
5. 実践編:いつ何を使う?どう使う?
5-1. 目的別の使い分け
これまでのデータをまとめると、現時点での現実的な使い分けはこんな感じです。
DOMS(筋肉痛)期の“張り・硬さ”を少しでも早く取りたい
- 優先:フォームローラー(できれば振動付き)
- 理由:2025年DOMS研究で硬さ・緊張・弾性の回復がもっとも優れていたのはフォームローラーだったため
トレーニング前に可動域を上げつつ、パフォーマンスを落としたくない
- 優先:フォームローラー or 振動フォームローラー
- 理由:
- ROM向上+パフォーマンス低下なしというエビデンスが多数
- 長時間の静的ストレッチのみよりも安全
「気持ち良さ」「リラクゼーション」「ピンポイントのコリ」を狙いたい
- 優先:マッサージガン
- 理由:
- パーカッシブマッサージは、自律神経・疼痛知覚に働きやすい
- 深部の小さなポイントに当てやすい
とにかく1本で“全部乗せ”したい
- 選択肢:振動フォームローラー
- フォームローラー+マッサージガンの良いところどりを狙える
- 柔軟性・筋持久力・筋力増加のデータが増えつつある
5-2. 具体的な使い方(時間・強さ・タイミング)
① トレーニング前(パフォーマンスアップ狙い)
- ターゲット:
- その日に使う筋群(例:背中の日 → 広背筋、ハム・殿筋)
- 時間:
- 1部位あたり 90〜120秒を目安(フォームローラーメタ分析の推奨)
- 強さ:
- 痛みスケール0〜10でいう 6/10 程度(痛いけど耐えられる)
※例えば、2024年の研究では、
ラットプルダウンのセット間に広背筋へフォームローラーを入れると、
レップ数と平均筋力が有意に増加したという報告もあります。
② トレーニング後〜数時間(リカバリー狙い)
- ターゲット:その日に酷使した筋
- 時間:
- 1部位あたり 3〜5分を目安にゆっくりロール
- 強さ:
- 「心地よい〜やや痛い」レベル
- 強すぎると、かえって痛みが増す可能性があるので注意
③ マッサージガンの目安
エビデンス的には、
- 可動域・痛み軽減なら
- 1部位 1〜2分×数セット
- DOMS回復をしっかり狙うなら
- 20〜40分という長めのプロトコルが効果的だった研究もある
ただし、ウォームアップ前に長時間使うと、
一部の瞬発系パフォーマンスを落とす可能性もあるので、
**「試合前は短時間」「リカバリー目的なら長め」**というイメージが無難です。
6. 振動フォームローラーを選ぶときのチェックポイント
最後に、振動フォームローラーを選ぶ際のポイントをまとめます。
6-1. 振動数(Frequency)
研究では、**1分あたり2400回以上(40Hz程度〜)**の振動を使っているものが多く、
これ未満だと効果がはっきりしない場合があります。
- 目安:
- 低速:疲労抜き・リラックス
- 中速〜高速:ウォームアップ・パフォーマンスアップ
6-2. 強度切り替えの段階数
- 3〜5段階程度あると、
- 「今日はリカバリーで弱め」
- 「試合前で強め」
など、目的に合わせやすいです。
6-3. 硬さ・形状
- 筋膜リリース目的:
- 中程度の硬さ、凹凸が少ないもの
- 強い刺激が欲しい上級者:
- 突起付きタイプも選択肢
6-4. 騒音・床への振動
振動フォームローラーは、床に置くとかなり“響き”ます。
- 可能ならヨガマットや厚めのマットの上で使用
- 深夜や集合住宅では、静音性も商品選びのポイントになります
7. まとめ:現時点の“科学的な判定”
最後に、ここまでの内容を整理します。
- DOMS期の「硬さ・張り」の回復
- 2025年の直接比較では、フォームローラーがマッサージガンより優位
- 痛みそのものは、どちらも安静と大差なし
- トレーニング前のウォームアップ
- フォームローラー(+振動)は
- ROM向上
- パフォーマンス低下なし
というデータが多く、安全に使いやすい
- フォームローラー(+振動)は
- マッサージガン
- 可動域・筋力・爆発的筋力を一時的に上げる研究もある
- ただし、プロトコルによってはパフォーマンス低下や筋肉痛増加の報告もあり、
「使い方の最適解」がまだ固まり切っていない
- 振動フォームローラー
- 通常フォームローラーより
- 筋力アップ
- 可動域アップ
- 筋柔軟性アップ
が期待できる研究結果が増えつつある
- 通常フォームローラーより
- 総合評価
- 研究数の“厚み”と信頼性:フォームローラー > マッサージガン
- 気持ちよさ・ピンポイントケア:マッサージガンに軍配
- 両者のいいとこ取り:振動フォームローラーが有望
参考文献(References)
- Szajkowski S, et al. Foam Rolling or Percussive Massage for Muscle Recovery: Insights into Delayed-Onset Muscle Soreness (DOMS). J Funct Morphol Kinesiol. 2025.
- Konrad A, et al. Remote effects of a 7-week combined stretching and foam rolling training intervention of the plantar foot sole on the function and structure of the triceps surae. Eur J Appl Physiol. 2023.
- Wiewelhove T, et al. A Meta-Analysis of the Effects of Foam Rolling on Performance and Recovery. Front Physiol. 2019.
- Hendricks S, et al. Effects of foam rolling on performance and recovery: A systematic review. J Bodyw Mov Ther. 2020.
- Konrad A, et al. Foam Rolling Training Effects on Range of Motion: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022.
- Konrad A, et al. A comparison of a single bout of stretching or foam rolling on range of motion in healthy subjects. Front Physiol. 2022.
- Chen CH, et al. Acute effects of combining dynamic stretching and vibration foam rolling warm-up on lower-limb muscle performance and functions in female handball players. J Strength Cond Res. 2023.
- Reiner MM, et al. A comparison of foam rolling and vibration foam rolling on quadriceps muscle function and mechanical properties. Eur J Appl Physiol. 2021.
- Russo L, et al. Inter-Set Foam Rolling of the Latissimus Dorsi Acutely Increases Repetitions in Lat Pull-Down Exercise without Affecting RPE. Int J Environ Res Public Health. 2024.
- Ferreira RM, et al. The Effects of Massage Guns on Performance and Recovery: A Systematic Review. Healthcare (Basel). 2023.
- Li H, et al. The effect of percussion massage therapy on the recovery of delayed onset muscle soreness in physically active young men: a randomized controlled trial. Front Public Health. 2025.
- Ormeno L, et al. Does Massage Gun or Foam Roller Use During a Warm-up Improve Performance? Sports. 2025.
コメント