【栄養学】マルチビタミンって意味あるの?

目次

先に結論


この記事でわかること

  • マルチビタミン(以下MV)のエビデンスの現在地
  • どんな人に意味があるか/ないかの線引き
  • 食品で埋めるコツ過剰摂取の注意点

1. まず、どこまで効くの?

がん・心血管疾患・死亡率

結論からいうと、一般成人の一次予防では効果はほぼなし。約200万人以上を含むメタ解析で、心血管アウトカム改善なしが明確です。AHAMedical JournalsPubMed
また、**USPSTF(米国予防医療作業部会)は、βカロテンとビタミンEの摂取を推奨しない(D推奨)、MVについては有効性不明(I)**と結論。uspreventiveservicestaskforce.orgJAMA Network

例外として、特定のRCTで**総がん発生の“わずかな低下”**が示された報告もありますが(男性医師対象のPHS II)、総合的判断は「病気予防の決め手にはならない」。JAMA Network

認知機能

**長期多施設RCT(PHS II)**で、MV vs プラセボの差はなし。短期介入で一部バイオマーカーや主観指標が動く研究もありますが、臨床的に意味のある一貫した改善は示せていませんPMC+1PubMed

体重・体脂肪などの体組成

体重や体脂肪について、MVで有利になる一貫した証拠は乏しい(RCT・レビューの範囲でも明確差は出にくい)。PubMed


2. 「害」はあるの?

「適量」なら大問題になりにくい一方で、“たくさん=良い”は間違いです。

  • 観察研究高齢女性でのサプリ使用(MV含む)と総死亡リスク上昇との関連が報告。因果は断言できないものの、「漫然と多用」にはブレーキが必要。PMC
  • 成分個別のリスクビタミンEの高用量や、喫煙者でのβカロテン有害の可能性uspreventiveservicestaskforce.orgがん情報センター

**上限量(UL)**にも注意。例:ビタミンA(レチノール)=3,000 μg/日ビタミンE=1,000 mg/日ビタミンB6=過量で神経障害など。国や指針で微差はありますが、UL超えは避けるが原則。ods.od.nih.gov+2ods.od.nih.gov+2


3. じゃあ、誰に“意味がある”の?(必要な人の見極め)

妊活〜妊娠期:葉酸は必須

神経管欠損の予防のため、妊娠可能年齢は葉酸0.4〜0.8 mg/日の摂取が強く推奨(A)。MVを利用して充足するのは合理的。※レチノール型ビタミンAの過量には要注意。uspreventiveservicestaskforce.orgアメリカ産婦人科医会

菜食(特にヴィーガン):ビタミンB12

B12は動物性由来が中心菜食・長期メトホルミン・胃酸抑制薬などはB12不足リスクが上がるため、単味B12 or MVで補う価値が高い。ods.od.nih.govThe Nutrition Source

消化吸収に課題がある人・バリャトリック手術後

吸収低下が起きやすく、高力価の専用MVが推奨されることがあります(医療者と設計を)。NCBIasmbs.org

エネルギー制限ダイエット中

食事量が落ちれば微量栄養素も落ちやすい。特に流行ダイエットはRDI未達が生じやすいとの分析あり(メニュー設計依存)。食事の多様性を最優先に、不足が読めない時は“低用量MV”で保険は現実的です。PubMedPMC


4. 実務:飲むなら“この考え方”

ルール1:100%DV(RDA)の“1回ぶん”で埋めない

1粒で1日分」はUL超過の地雷になりがち。1/3〜1/2DV/粒分割タイプを選ぶと、食事との足し算がしやすく安全域が広がります。(ULの目安は上記参照)ods.od.nih.gov+1

ルール2:目的を“食事が主、サプリは補助”に

不足“かも”領域ピンポイントで埋めるのがMVの仕事。葉酸・B12・鉄・Dなど、人によって単味が適切な場面も多いです。uspreventiveservicestaskforce.org

ルール3:健康診断・服薬状況とセットで判断

メトホルミン・PPIなどはB12低下と関連。薬歴×栄養で決めると無駄が減ります。Mayo Clinic


5. サプリに頼りすぎない“食材セット”(まずはここから)

MVに手を出す前に、毎日回せる食品で土台づくり。

  • (2個):B群・ビタミンDコリンの供給源。
  • サーモン(150 g):D・B12+高品質たんぱく。
  • ほうれん草(100 g):葉酸・ビタミンKなど緑黄色野菜群。
  • キウイ(1–2個):ビタミンCが手軽に稼げる。
  • レバー(少量を時々):レチノールAが非常に多いので妊娠中は避ける/最小限にMy Food Data+1国立農業図書館+1ods.od.nih.gov

※食材の栄養価は総合的に働きます。**“まず食品、足りない分だけサプリ”**が基本姿勢です。


まとめ(チェックリスト)

  • 病気予防の特効薬ではない(CVD/がん/死亡率↓の一貫した効果なし)
  • 脳機能の上乗せも限定的(長期RCTで差なし)
  • 必要な人には意味がある(妊活〜妊娠の葉酸、菜食のB12、吸収に課題のある人、厳しい減量中など)
  • UL超過は避ける(A/E/B6などは特に注意)
  • **食事を主役に、MVは“欠けを埋める保険”**にとどめる

References(English, with links)

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